マルセル
高樹のぶ子は恋愛小説の名手だと思っていましたが、ミステリーをものしたと聞き、図書館から借りてきました。
「マルセル」(毎日新聞社、2012年3月刊)です。以下、その紹介。
昨年の元旦から大晦日まで毎日新聞に連載された小説。(ですから、3.11大震災の話題も出てきます)。
「マルセル」とは、ロートレックの名画で、
昭和43年末、京都国立近代美術館での展示会の最終日に盗まれる。
3億円事件が世上をさわがせた直後です。
フランスから貸し出された名画であるため、日本の名誉をかけた警察の捜査にも関らず、行方が分らない。
時効が成立したのは1975年の年末で、その一ヵ月後に、
突然、新聞社にマルセルは持ち込まれフランスに返還される。という事件を題材に、作者は推論を重ねて小説に仕上げました。
(「マルセル盗難事件」で検索すると面白い記事がたくさんあります。その一つのURL
http://2ndkyotoism.blog101.fc2.com/blog-entry-77.html
)
小説の主人公は、神戸生まれ、東京に勤める「千晶」という名の若き女性新聞記者。
父も新聞記者、それも、マルセル事件を追及していた記者だった。
千晶は、父の死後、残されたノートから、「マルセル事件」を知り、
ノートの記述をたどることから、43年前の事件の関係者とかかわりを持つことになるのです。
神戸で父の遺品の整理をして、大晦日、新幹線に乗る。ふと思いたって、
ノートによると父が住んでいたらしい京都北白川の地を訪れる。
そこで立ち寄った喫茶店で、オリオなる若い男性と知り合う。
事件の真相を探ろうとする千晶は、オリオの協力を得る。という展開のストーリーですが、
やはり、作者は恋愛小説の書き手ですので、確かにミステリーをたどる面白さはありますが、
千晶とオリオのラブストーリーの展開のほうがより面白いと感じました。
ミステリーの謎解きは、小説を読む興味を減殺しますから、
これ以上の筋書き紹介はいたしませんが、「恋愛小説」としては、お勧めできます。