「脱原発」成長論

『「脱原発」成長論』(金子勝著、2011年8月刊、ちくま書房)
 この本のポイント2箇所を以下に引用します。
【たとえ低線量であっても、内部被爆は長く深刻な影響を残す。チェリノブイリ原発事故後、現地に入った医師たちによって、ヨウ素131は小児甲状腺がんを、セシウム137は膀胱がんを引き起こすことが明らかにされている。小児甲状腺がんが広く認識されるのに10年、WHOなどでコンセンサスを得るのに20年かかった。また膀胱がんが発見され報告されたのが事故後18年、発癌メカニズムが明らかにされたのは23年後であった。】
事故直後、「直ちには健康被害はない」と繰り返し述べた政治家は、この事実をしっていたのだろうか。10年或いは20年後、東電はかつてのチッソと同様な苦境に追い込まれないだろうか!
 「脱原発」は、やりようによっては、投資を誘導し、経済を成長させることが可能だと、次のように述べている。
 【環境規制がイノベーシヨンを引き起こすことがある。たとえば、自動車の排ガスを規制を強化するマスキー法について見てみよう。米国はこれを見送ったが、日本は1978年に断行したことによって、燃費のよいエンジンを生み出し、日本車が米国市場を席巻した。
 近年多くの国々や地域で導入されている固定価格買取制度が、再生可能エネルギーの発電量を飛躍的に増加させた。
 再生可能エネルギーへの転換は少なくとも初期段階ではより高価なエネルギーへの転換となる。規制緩和して市場に任せても、こうした転換は容易には生じえない。とくに化石燃料から再生可能エネルギーへの転換に際して、全量固定価格買取制度が大きな役割を担っている。
 この新たな政府介入は、従来のケインズ主義のそれと同じではない。この製作が目的とするのは消費のおコントロールではなく、新しい投資の誘導と産業の創出だからである】