植物は凄い

『植物はすごい』(田中修著、中公新書、12年7月刊)を読みました。
冒頭、植物の凄さを、こう説明しています。
【キャベツのタネの重さは、一粒が約5mgです。この一粒のタネが栽培されると、発芽して、芽生えが成長し、約4ヶ月後には、市販される大きさの一玉ノキャベツになります。その重さは、およそ1200グラム・・・キャベツは約4ヶ月の間に24万倍・・・1000円が4ヶ月で2億4千万円になるという増え方。
 キャベツには、水分が多く含まれている。だから「含まれている水の重さを成長した量に加えるのはおかしい」という見方もあるでしょう。
 キャベツの水分含量は、約95%なので、1200gのうち1140gが水で残りの60gが成長した量です。これでも最初のタネの2万4千倍。1000円が4ヶ月で1200万円になるという増え方です。】
 お金にたとえると分りやしですね。一言で言うと、「植物についての薀蓄が身につく本」です。例えば「柿の渋」について。
 植物は自分では動くことが出来ません。しかし、子孫は広域に広げたい。自分の周辺だけにタネを落とすと、いわゆる「連作」と同じ弊害を生じます。それに大きな木の場合、親の樹に遮られて陽が当たりません。そこで、果実を動物に食べてもらい、動物の糞と一緒にタネを落としてもらう。ところが、タネが成熟しないうちに食べられるといけない。そこで、タネが未成熟のときは渋くするのです。
 カキの渋みは、クリの渋皮のようにまとまってあるのではなく、果肉や果汁の中に溶け込んでいる。実の中のタネができあがってくると、カキの実は、渋柿であっても甘くなる。
 渋みの正体は、クリの渋皮の成分と同じで、「タンニン」です。
 タンニンには、溶けない状態の「不溶性」に変化する性質があります。不溶性になると、タンニンを含んだ果肉や果汁を食べても、口の中でタンニンが溶け出してこないので、渋みを感じることはない(このタンニンを不溶性にすることを「渋を抜く」といいます。)
 タンニンを不溶性にする物質が、「アセトアルデヒト」です。
カキの実の中で、タネができあがるにつれて、アセトアルデヒトがつくられてくる。これが、果肉や果汁に含まれているタンニンと反応して、タンニンを不溶性に変えます。
 アセトアルデヒトによって、タンニンが不溶性のタンニンに変えられた姿が、カキの実の中にある「黒いゴマ」のように見えるものです。黒ゴマのような黒い斑点が多いカキの実ほど、渋みは消えている。
 タンニンを人為的に不溶性にする方法は、カキの実の呼吸を止めることです。カキの実も生きている。私たちと同じように、「酸素を吸って二酸化炭素を放出する」という「呼吸」をしています。この呼吸を人為的に止めると、カキの実の中に、アセトアルデヒトが出来ます。
 渋柿の呼吸を止める方法が「渋を抜く」技術です。いろいろな方法があり、例えば、お湯につけます。お湯に漬かったカキは、呼吸ができません。水ではなく、お湯につけるのは、温度が少し高いとアセトアルデヒトが出来やすいからです。
 こうした話題が満載の本でした。