定年後の勉強法

『定年後の勉強法』(和田秀樹著、ちくま新書、2012年9月刊)という本を読みました。
著者は、1960年生まれ、精神科医ですが、「大人のための勉強法」などの著書があり、受験アドバイザーとして知られているから、才人なのだろう。
 読了して思ったことは、「この本で書かれていることのほとんどを小生は実行している。だから、自分のやっていることを体系的に整理する意味では役立った」。
 この本で説かれているポイントは4つです。
 第一に、「定年後の勉強は健康法だ」
この主張には大賛成です。体と言うものは動かし続けないとダメになります。動物は動く物と書くように、動かない(あるいは動けない)ようになると、寿命の終りです。
 脳も体の一部です。心臓や肺臓と同じように、体の中の臓器です。ですから、脳も動かし続けないとダメになる。著者は、定年後の人生は「体の廃用」と戦わねばならないと説く。「廃用」とは、「使わないと衰える」現象です。
 使い続けなければ、脳の健康を維持することは出来ない。つまり、長生きしたければ勉強しなければならないというわけです。
 第二に、若い頃の勉強と定年後の勉強の大きな違いは、若い頃の勉強はインプットの比重が大きいのに、定年後のそれはアウトプットの比重を大きくしなければならない。
 インプットの勉強とは、学んだこと(世の中で分っていること)を、自分の中にも蓄積すること。アウトプットの勉強とは、学んだことに今までの自分の人生の体験を組み合わせて、新しい知見を世間に発表することですが、そう難しくいわずとも、学んだことを第三者に分りやすく説明することも、アウトプットです。
 第三に、定年後世代が若い人に比べて落ちる能力は、記憶力です。
 しかし、記憶力が落ちるといっても、記憶する能力自体が落ちるのでなく、記憶したことを思い出す(検索する)能力が落ちるのです。この弱点を克服するにはどうしたらいいか。著者は復習しかないという。その復習の仕方を工夫する必要がある。例えば、私の場合、本を読んだら、必ず、その要点を文書に書いて、メールを送ったり、ブログに載せています。その文章を書くとき、ここはどう書いてあったかな?と重要な箇所を読み返すことになります。これが復習になっていると同時に、勉強のアウトプットになっています。
 第四に、パソコンを使いこなせるようになること。これはパソコンのオタクになれという意味ではありません。第二に述べたアウトプットをしようとするとき、パソコンを使えると、その作業が低コストで出来るからです。
 最後に、著者がすばらしい第二の人生を実現するために述べていたこと。
 平均寿命が80歳の時代、『定年後の20年「第二の人生」を始めるに当たって、いままで挑戦してこなかった分野に思い切ってチャレンジしてはどうか。因みに筆者は40歳を過ぎてから映画監督に挑戦し、さらに飛行機の免許所得を計画している』とか。