定数是正の妙案

衆院の定数是正は、とりあえず0増5減の法案が成立したが、区割りが出来ていないので、今回の選挙は違憲状態で行われることになる。人口は変動するから、次回の選挙が0増5減で行われたとしても、違憲状態がなくなっているかどうかは分らない。
そこで、いちいち法律を直さなくても、一票の格差が生じない方式はないか。
例えば、選挙区は各県ごとにする。選挙区の定員は投票前には定めない。選挙後、各県の投票数に応じてドント方式で各選挙区に定員を割り当てることにするという方式が考えられる。定数是正の妙案だと思います。投票数に応じてですから、棄権が多ければ定員は少なくなります。定数の一番少ない県の定数は1としておけば、総定数も自動的に決まる。
実は、このアイデア、『政権交代』(小林良彰著、中公新書、2012年9月刊)という本に載っていたアイデアです。
年末総選挙が定まり、「これで民主党政権と縁を切れるか」とほっとしているのですが、この3年3月にわたった民主党政権は何であったか、総括してみようと、図書館の棚に見つけて借りてきて読みました。
あらためて、2009年秋以降の政権の歴史を振り返ってみると、いかにお粗末な政権運営であったかが、確認される本でした。
どうしてこんなことになったのか。私は小選挙区制が少なからず関係していると思うのです。小選挙制は政権交代の可能性を高めるといわれました。
実態を見ましょう。2009年の選挙で、小選挙区民主党は、47%の投票率で、74%の議席を獲得しました。2005年の選挙では、自民党が48%の投票率で73%の議席を獲得したのです。50%未満の投票率で圧倒的に多数の議席が獲得できるのだから、確かに政権交代が起き易い。しかし、そのことは同時に、少ない投票率政権交代を起こしやすいことを意味します。
もう一つ、小選挙区制は二大政党制を定着させるといわれました。確かに一人しか当選しないのですから、大政党に所属しないと当選できない。そうなると、議員は党執行部の言うままに動くようになり(つまり陣笠議員に期待されるのは執行部の繰り人形)、自分でものを考えない議員が多くなる。議員の質が劣化する。
政党助成金にしても、政党に交付されるので、執行部のご機嫌を損なうと、助成金の配分が少なくなる。陣笠の質が低下すると(下から追い抜かれる心配がなくなり)、親分衆の質が落ちてくる。
2009年の選挙だけでなく、2005年の郵政選挙も、お粗末な議員を生み日本の政治を誤らせたと、私は思う。かくて、かつては3流だった日本の政治は4流以下になった。
小選挙制は、90年代前半に、小沢一郎さんらが中心になって成立させたのですが、政権交代は実現したものの、日本の政治を劣化させた。だから、小沢さんの最大の政治的失敗だったと思います。
“0増5減”でなく、小選挙制そのものを止めて欲しいと思っているのですが、なんともならないと嘆いています。