『不完全性定理とは何か』(竹内薫著、13年4月刊講談社ブルーバックス)という本

読んで、なるほどと思う文章に出逢いました。
その前に・・
コンピュータが、いわゆるフリーズ状態になった時、コンピュータの計算が無限ループ陥っているのか、あるいは、計算に時間がかかっているだけで、将来は計算が終わるのか、知る方法はあるのでしょうか?
 ここで、有名なカントール(1845〜1918)の対角線論法が出てきます。
 「実数の集合は、加算無限集合(自然数、偶数、奇数など)より大きい」
 これを証明するのが、対角線論法です。
ステップ0:話を簡単にするために0以上1未満の実数を考える。
ステップ1:仮に0以上1未満の実数が自然数と1対1対応がつくとしよう。
ステップ2:自然数と実数の対応表において、実数の対角線に相当する各桁の数に1を足す数(9+1→0とする)を作ると、この数は対応表に載っているいかなる数とも異なる。即ち、この数は対応表に載っていない。
ステップ3:一覧表に載っていない実数があるということは、実数は自然数より多い。
 コンピュータのフリーズ問題に戻ります。
ステップ1:あらゆる計算にそれぞれ特化したチューリング機械T(プログラムと考えてよい)にそれぞれ背番号をつけて、縦に並べる。
ステップ2:Tに入力できるデータを横に並べる。
ステップ3:各機械と入力に応ずる出力結果の一覧表を作る。計算が終わらないときは“?”を出力結果とする。即ち、機械が停止して具体的な数値を出力するか、停止せずに走り続けるかは決まっていると仮定する。
ステップ4:出力の対角線の数値に1を足す。数値の欄が“?”だったら、0とする。
ステップ5:ステップ4の結果を出力する機械は一覧表にない。
ステップ6:ステップ5は一覧表があらゆる計算を網羅していないことを意味する。これは、機械が停止して具体的な数値を出力するか、停止せずに走り続けるかは決まっているとした仮定の誤りである。即ち、任意のチューリング機械が停止するかしないかは決められない。

なるほどと思った文は、こうです。
【数学にしろ物理学にしろ、革命的な理論がわからない」と感じたときは、普通の教科書ではなく「歴史」を欠いた本を読むと、目から鱗が落ちることがある。なぜなら、歴史的な視点で学問の発展を追うことにより、革命前夜の混乱と、革命後の整理整頓された知的状況が俯瞰できるから。当時の人々が抱えていた問題と、その解決、という地図が理解できて初めて、革命の意味が理解できる。そうでなく、教科書でいきなり革命後の説明をされても、そもそもの必要性が感じられず、理解できないほうがふつうなのだ。】
 カントールって時代に先駆けていたのですね。