『指からわかる男の能力と病』

講談社現代新書、2013年6月刊)を読みました。
Hox遺伝子と言う遺伝子があります。身体を形作る遺伝子で、染色体のある領域に10個ぐらいの遺伝子が並んでいます。
10個程度のHox遺伝子が並んでいる順とそれぞれが形作りを担当する部分が対応しています。先頭に近い部分のHox遺伝子ほど胴体でいうと頸に近いところ、腕や足でいうと、付け根に近いところを担当する。そして終りに近いHox遺伝子ほど、胴体でいうと、末端部分、つまり泌尿器や生殖器、腕や足でいうと、末端である指を、担当している。
 生殖器担当のHox遺伝子と指担当のHox遺伝子は同じメンバーで、したがって、指を見れば、生殖器の出来栄えも推定できるという。
 こうして竹内さんは『女は男の指を見る】(新潮新書)を書いたが、この本はその続編ということだ。( 著者はまず指比という概念を提起する。右手の人指し指の長さ割る薬指の長さです。
長さは掌の側で図り、指の付け根のしわの真ん中から指の先端までで図る。日本人では、男が0.94〜0.95。女で0.95〜0.96.指比は胎児期に定まり、一生かわらないそうです。胎児の浸かっている羊水に含まれるテストストロン(男性ホルモン)とエスタジオール(女性ホルモン)のレベルで決まる。この胎児期に浴びるホルモンについての研究が進められています。
自閉症の子は、指比が低いことがしられています。胎児期の高いテストステロンのレベルが影響しているようです。人と人の間に絆を作り愛着を生み出すホルモンとしてオキシトシンというものがあります。元々は出産の際に、母親の脳から算出されるものです。胎児期に放出されるテストステロンは、このオキシトシン受容体の働きを弱めるそうです。
 「女が高齢で出産することで、ダウン症の子が生まれるリスク」については、良くしられていますが、男が高齢で子を持つ際のリスクはないでしょうか。
父になった年齢が50歳以上であると、29歳以下で父になった場合に比べ2.2倍も自閉症の子を持つ可能性が高い。
55歳以上と29歳以下とで比較するなら、4.4倍もの違いがあった。
 なぜ母でなく、父の年齢なのでしょう。それは、精子の元となる細胞が分裂しDNAがコピーされて日々作られる、一日に何千万という数、しかも長い年月のうちには、元となる細胞のDNAに突然変異がどんどん起きて、いわば原本に傷が蓄積され、その傷がコピーされる。
こうして男は年をとるにつれ、あちこちの遺伝子に突然変異の起きた精子をつくる。変異の中には自閉症にかかわる遺伝子へと変貌させるものが含まれるのだそうです。。