経済と世相

誰が小沢一郎を殺すのか

『誰が小沢一郎を殺すのか』(カレル・ヴァン・ウオルフレン著、角川書店11年3月刊)というセンセーシヨナルな題の本を読みました。大震災のニュースで、いまや誰も小沢問題など気にする人もなくなったようですが、この本は面白い。読んで感心するのは、…

日本経済論

『日本経済論』(松原隆一郎著、NHK出版新書、11年1月刊)を読みました。小泉内閣の登場から民主党政権の経済運営までを論じて、概ね妥当な解説であると感じましたが、欲を言えば、小泉内閣登場時に、こういう解説がほしかった。しかし、小泉内閣の経…

ルポ貧困大国アメリカ?

『ルポ貧困大国アメリカ?』(堤未果著、岩波新書、10年1月刊)を読みました。 第1章は「公教育が借金地獄に変わる」。学資ローンの重圧に悩む人々のレポートです。かつて、教育はよりキャリヤアップするためのステップであった。いまや学歴を手にしても…

ヒトラーとケインズ

『ヒトラーとケインズ』(武田知弘著、10年6月刊祥伝社新書)という面白いタイトルの本を読みました。 「不況期には、政府が財政出動して有効需要を創出し、失業を減らす」というケインズ理論は、今でも経済学説の重要な一角を占めている。 ヒトラーは、…

良い財政赤字 悪い財政赤字 少し古い本ですが、『良い財政赤字 悪い財政赤字』(リチャード・クー著、01年1月刊、PHP)を読みました。財政赤字がますます問題になっている昨今、参考になりました。

著者クーさんの「バランスシート不況論」は有名ですが、ご存知ない方のため簡単に説明すると、「バブルの破綻によって、個人も企業も資産価値が激減すると、それぞれのバランスシートが毀損して、個人も企業もバランス上、負債の縮小に勤めるようになる。負…

魚は頭から腐る

塩野七生さんの『日本人へ 国家と歴史扁』(文春新書、10年6月刊)という本を読みました。雑誌『文芸春秋』に連載されたエッセイを纏めたものですが、扉にあった次の言葉に惹かれたからです。『亡国の悲劇とは、人材が欠乏するから起こるのではなく、人材は…

さらば外務省!

天木直人さん、面白い人だ、著書を読んでみようと、図書館で検索したら『さらば外務省!』(講談社、03年10月刊)が見つかりました。 早速読んでみたのですが、次から次へと外務省高級官僚の堕落振りが紹介されていました。 外務省のスキャンダルといえ…

消費税のカラクリ

「議論、消費税にとどめるな」と題する記事が3日の朝日朝刊に載っていました。安井編集委員の寄稿ですが、面白い指摘を紹介します。 『21年前消費税の導入にあたり、政府が繰り返し訴えたのは、「直間比率の是正」。所得税や法人税など直接税中心の税制か…

検察が危ない

『検察が危ない』(郷原信郎著、10年4月刊、ベスト新書)を読んでみました。 著者の履歴をみると、「1955年島根県生まれ、東大理学部卒、1983年検事任官。2006年弁護士登録。現在名城大学教授、総務省顧問・コンプライアンス室長・・・」とあ…

世界を知る力(2)

【アジヤはどうか。たとえば、東アジヤにおける域内貿易比率をみると、20年前には3割程度だったのが、10年前には4割に、そして現在は5割に達しようという現実がある。かつて市場の最終目的地をアメリカに定めていたアジヤ経済が、いまや相互に活発な…

世界を知る力

以下は寺島実郎さんの『世界を知る力』(10年1月刊、PHP新書)の要旨紹介です。21世紀の日本を展望して、こう述べています。 【日本には、いまでも、世界レベルのシンクタンクと通信社がない。・・・時事通信、共同通信が世界に派遣している特派員の数…

続・変わる世界、立ち遅れる日本

【09年夏に(世界の)景気が回復すると、・・・景気後退から真っ先に抜け出した富める国は、製造業大国である日本とドイツ、それにフランスだった。これらの国は、アメリカより3ヶ月、イギリスより6ヶ月も早く回復したのである。 しかし、(今後、日本が…

変わる世界、立ち遅れる日本

岩波新書と講談社新書を2冊ずつ読んだので、今度はPHP新書を2冊購入して読みました。『世界を知る力』(寺島実郎著、10年1月刊)と『変わる世界、立ち遅れる日本』(ビル・エモット著、10年3月刊)です。 寺島さん(1947年生まれ)は、多摩大学…

日本は農業大国

『日本は世界5位の農業大国』(淺川芳裕著、10年2月刊、講談社+α新書)が面白い。長くなりますが、面白い個所を紹介します。 ネギの生産量が世界1の国はどこ? 答えは日本です。 国内の農業生産額はおよそ8兆円。これは世界5位。先進国に限れば米国に…

お金の機能

「経済物理学の発見」(高安秀樹著、光文社新書)という本を5年ほど前に買いました。読み始めたがどうも面白くないので、書棚に置いたまま放置していましたが、ふっと思い出して再読してみました。 ところが、今読むと面白いのです。どうも、5年前の小生は…

「郵政改革とは何であったか?」

『失われた<20年>』(朝日新聞「変転経済」取材班編、岩波書店09年2月刊行)を見ていたら、面白い解説が出ていました。【97年11月22日午前1時過ぎ、橋本竜太郎(首相)は厚生相の小泉純一郎に電話でこう伝えた。「小泉さん、あなたが主張してき…

日本が震源地?

『スラム化する日本経済』(浜矩子著、講談社α新書、09年3月刊)を読みました。「グローバル恐慌(岩波新書))」の姉妹編とのこと、本屋で手に取ってみたら、「日本が真の震源地」という章が目に付き、読んでみようと買った次第です。以下、読後感です。 …

平成経済20年史

「平成経済20年史」(幻冬舎新書)という本が出ています。著者は、紺谷典子さん。TVでよく顔を見るからご存知の方も多いでしょう。日本証券経済研究所の出だから、株式市場に詳しい。この本、帯の文句が良い。『「改革」するたび、生活は悪化した。』 どん…

グローバル恐慌(2)

円はかくれ機軸通貨?そもそも、サブプライム・ローン証券化問題は、なぜここまで見てきたような広がりを示すに至ったのか。いくら巧みに証券化手法を駆使しても、買い手がいなければ商品は売れない。本質的な不透明さとリスクが付きまとう債権担保証券に、…

グローバル恐慌

「グローバル恐慌」(浜矩子著、岩波新書)を読みました。浜矩子さんは、時折中日新聞に寄稿をしているのですが、その論旨が的を得ているので、日頃、注目しているエコノミストです。今月の岩波新書に、彼女の著が出ていると聞き、すぐ買ってきました。とて…

偽装建築と金融派生商品

『自然な建築』(隈研吾著、岩波新書、08年11月刊)を読みました。以下、感想です。著者は、1954年生まれ、株式会社隈研吾建築都市設計事務所代表(主宰)。慶応大学理工学部システムデザイン工学科教授。冒頭、著者はこう述べています。『「20世紀と…

後期高齢者医療制度

お正月に「後期高齢者医療制度」(伊藤周平著、平凡社新書、08年10月刊)を読みました。筆者は鹿児島大学法科大学院教授。序章で述べているが、「後期高齢者医療制度は廃止し、野党の廃止法案のように、いったん元の老人保険制度に戻したうえで、高齢者…

金融サミットG20の意味するもの

前日の続き。水野さんは米ドル体制の終わりに言及しています。『サブプライム問題に始まる世界金融危機は、ドルの終わりの始まりであり、G7の終わりの始まりでもあるといえるのです。08年11月14,15日にワシントンで開かれた金融サミットG20は、ま…

400年来の危機

友人からの年賀状、「なぜ100年に一度の危機?」とありました。正月休みに読んだ本に、その回答がありました「金融大崩壊」(水野和夫著、NHK新書、08年12月刊)です。 「100年の危機」どころか、「400年来の危機」と筆者は説いています。「国民…

反貧困

「反貧困」(湯浅誠著、岩波新書、08年4月刊)という本を読みました。先日、NHKの特集番組で、著者の湯浅さん(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長)と、大学の先生、それに経団連の役員の3人の討論が放映されていたが、湯浅さんの…

嘘つき大統領のデタラメ経済

米国の大統領選挙も終わりました。 『嘘つき大統領のデタラメ経済』(ポール・クルーグマン著、早川書房、04年1月刊)という本を県立図書館の棚で見つけ、面白そうだな、と借りてきました。筆者は、今年の経済学のノーベル賞受賞者。書名から見て、ブッシ…

『閉塞経済』(金子勝著、ちくま新書、08年7月刊)

を読みました。 【「金融資本主義」の時代を分析するために、どのような経済学が必要なのか―――この本は、この問いに対する私のささやかな考えを書いたものです。】という前書きから始まります。【 】内は同書からの引用 バブル発生、崩壊の原因 【普通の経済…

少子・高齢化問題を解決

少子・高齢化問題を解決する名案(迷案かな?)です。この問題を議論するとき、少子の子とは何歳以下をいい、高齢者とは何歳以上を言うのでしょうか。厚労省の統計では、0〜14歳を年少人口、65歳以上を老年人口、と定めています。しかし、この定義は4…

バイオ燃料

NHKの「クローズアップ現代」が3日、「バイオ燃料と食料高騰」を取り上げていました。 たまたま読んでいた『「お金』崩壊」(青木秀和著、集英社新書、4月22日刊)という面白い題の本に、この問題が記述されていました。【2007年1月、ブッシュ大統領…

居酒屋タクシー愛用のエリート官僚に是非読ませたい

先日、愛知県図書館をのぞいたら、経営者の執筆した本の展示をやっていて、『企業崩壊』(吉野俊彦著、98年12月刊日経新聞社)という本を見つけました。 吉野さんは日銀のエコノミストとして有名。また鴎外の研究者として著名ですが、「経営者かな?」と…