経済と世相

川鉄千葉のこんな事例もあった

ここ数回、野口著『モノづくり幻想が日本経済をダメにする』から引用していましたが、やっと読み終わりました。 エピソードの引用が巧みで、面白い本でした。タイトルが一寸何のこと?と思わせますが、筆者の主張を、これもエピソードで説明すると、 【半世…

新しいタイプのグローバリゼーシヨン

【直接投資受入残高のGDPに対する比率を見ると、・・・イギリスにおける外資の比重は、GDPの36.6%と驚くべき高水準・・これに対して、日本では、わずかに2.2%に過ぎない(05年)。アメリカ(13%)やドイツ(18%)もイギリスより低いとは…

「オフショアリング」

次に、イギリスを例にとってみよう。【05年におけるイギリスの一人当たりGDP(37310ドル)は、日本を上回る・・・イギリスが日本を抜いたことは、格別の意味を持っている。なぜなら、これまで一人当たりGDPで日本を上回っていたヨーロッパの国々は、…

グローバリゼーシヨンの波(1)アイルランド

野口悠紀雄さんの『資本開国論』(07年5月刊)を読んでいます。 先日、太田経済担当大臣が「日本はもはや一流国ではない」と発言したそうです。 一人当たり国民所得が06年、18位に落ちたことを踏まえての発言でしょう どうしてこういうことになったか…

バブルで損したのは納税者

以下、野口さんの本のハイライトです。 バブルの総決算。 【「バブル崩壊で日本の富が失われた」というのは誤りである・・・損をした人がいる反面で、不動産や株を高く売った人がいることを忘れてはならない。】しかし・・・ 【日本全体で見れば損得は帳消し…

ドッジは竹馬を知らなかった

富山への旅で、車中、「戦後日本経済史」(野口悠紀雄著、新潮選書)を読んだ。面白いと思った個所を紹介します。 最初は、「ドッジが竹馬を知らなかった」という話。 【「ドッジライン」はデトロイト銀行頭取ドッジのアイデアだとされている。しかし、本当…

日本経済 見捨てられる私たち

『日本経済 見捨てられる私たち』(08年2月青灯社刊、¥1470)という本を読みました。 著者は山家(やんべ)悠紀夫さんです。岩波新書で「景気とは何だろうか」を出された方です。 一言で言って、「経済学を知らない人のための現下の日本経済の説明書」と…

賢者のデジタル

今『賢者のデジタル』(山根一真著、07年8月刊、マガジンハウス社)という本を読んでいます。 興味あるサイトの紹介がありましたので、皆様に紹介します。 最初は、イラク戦争の戦費が時々刻々増えていく状況のサイト。http://edit-real.com/esaka/archiv…

とんでもない人を首相にしてしまった

もう年末です。気がついてみると、読むつもりで買い込んだ本が何冊かツンドク状態になっている。というわけで、この所せっせと読み始めた。高村薫さんの【作家的時評集 2000-2007】(朝日文庫)もその1冊です。高村さんは言う。【最近、自分が生きてきたはず…

美しくない日本・壊れる日本人

新潮文庫の11月は面白い企画で新刊を出した。 『美しくない日本』フェアと題する以下の3冊です。 壊れる日本人 柳田邦男著 自伝の日本学 保阪正康著 国家の罠 佐藤 優著 早速買い求め、読んでみることにしました。 まずは『壊れる日本人』の紹介です。 「ケ…

ただ時の過ぎゆかぬように

阿久悠さんの『ただ時の過ぎゆかぬように』(岩波書店03/01/28刊)を読みました。 書名が難しいのですが「ただぼんやりして時代が過ぎていっては具合が悪いので、書き残しておくメモ」というような意味に、私は取りました。私も「ただ読み過ごさぬように」、…

憲法9条・イラク戦争・アメリカの時代

【憲法第9条があっても、それを極限までねじまげ、ここまでアメリカにコミットした小泉首相は、完全に国を誤ったというべきである。第9条がなかったら、小泉首相はどこまでアメリカに肩入れし、どれだけ日本人の血を流していただろうか。想像するだに恐ろ…

いわゆる小泉改革

以下、いわゆる小泉改革について立花さんは語ります。 【私は、小泉首相の郵政民営化の基本的発想そのものが根本的に間違っていると思う。 郵政民営化論者の最大の狙いは、なんといっても事業体としての郵政公社を解体し、郵政3事業をバラバラにして、それ…

ロッキードとライブドア

『滅びゆく国家』という本を図書館で見つけました。立花隆著、日経BP刊です。副題に「日本はどこへ向かうのか」とあります。日経BP社のウェブページに著者が連載した時評を編集したもので、『政治家が大きくまちがえるとき、いつの時代でも面白くない運…

民営化とヴァウチャー

今、「民営化で誰が得をするか」(石井陽一著、平凡社新書)という本を読んでいます。 『所有移転型の民営化とは、基本的には国有財産の売却である。国民主権の立場からいえば、国有財産は国民全体に帰属するものであり、事実、日本の公社・公団は、国民の税…

次世代ウェブ グーグルの次のモデル

5月8日のNHKクローズアップ現代はブログを取上げていました。番組の中で「世界中のブログの3分の1は日本人が書いている」と言う。 日本人の文化的レベルは想像以上に高いのかも? ゲストに佐々木俊尚さんが登場した。ウェブ関係を得意とするジャーナリ…

小泉史観?

今や昭和史研究の第一人者の観がある保阪正康さんの『「靖国」という悩み』(毎 日新聞07年1月刊)という本を図書館の書棚で見つけて読みました。『サンデイ毎 日』06/07/02から07/10/15までの連載に、『現代』や『世界』に執筆した文章を加 えたものです…

レクイェム

『レクイェム』(NHK出版、07年1月刊)という本を読みました。著者は伯野 卓彦さん。NHKチーフプロデューサーで、「プロジェクトX」を制作された方で す。 題名の「レクイェム」、鎮魂歌とは何に対する鎮魂歌か?国有化され今はその名の 消滅した…

ユーロランドの経済学

浜紀子さんの著作に関心をもち、図書館で「ユーロランドの経済学」(01年1月刊行)を借りてきました。 いささか、データが古い憾みはありますが、最近のユーロ高から、改めてユーロを見直したいという思いには答えてくれました。 EU幹部にはお気に召さな…

経済の三角形

中日新聞の寄稿を読んで、浜矩子さんに関心をもち、図書館で検索して「経済は地球をまわる」(浜矩子著、ちくまプリマーズブック、01年7月刊行)という本を借りてきました。期待にたがわずユニークな人でした。最も気に入った言葉は、 『良きエコノミストた…

環境問題が経済・技術を発展させる

「この国の未来へ」(佐和隆光著、ちくま新書)を読みました。 【本書は、地球環境問題をめぐる、私の一般読者向け著作の2冊目である。一冊目は、京都会議の直前に刊行された『地球温暖化を防ぐ』(岩波新書)である。二冊目の本書は、・・・「環境の世紀」…

「おとな二人の午後」

数日前、プールの帰りに図書館(プールの3階)をのぞくと新着本の棚に沢山本が並んでいる。手にとって見ると、寄贈本です。本の整理に困惑したら図書館に寄付すれば、きちんと整理しておいてくれます。 面白そうな本は?と眺めて2冊借りてきました。一冊は…

続・無思想の発見

養老孟司さんの「無思想の発見」に、もう一つ、脳の働きと言葉について、興味深い記述がありました。 【目の前にリンゴ2個とナシ2個があるとする。感覚世界では、それはただちに「違うものが四つ」として認識される。・・・ところが「同じ」という世界、言…

藤原先生の卓説

いや実に痛快な文でした。藤原正彦さん、文藝春秋新年号の巻頭論文「国家の堕落 驕れる経済人よ、猛省せよ」です。以下、そのさわりを紹介しますと、 【市場原理を至上のものとする新自由主義は、決して学問的に確立されたものではない。ハイエクやフリード…

メガバンクの搾取

最近、メガバンクが空前の利益を上げているのに、法人税を一銭も払わないということが話題になっています。野口悠紀雄さんの新著、『日本経済は本当に復活したのか』(ダイヤモンド社)に面白い指摘がありました。『「黒字亡国論」という誤解』の章を引用しま…

悪夢のサイクル

評論家の内橋克人さんが新刊を出したと言うので早速買ってきました。『悪夢のサイクル』(文藝春秋、¥1500)です。経済に関する本というものは、なかなかすらすらとは読めないのですが、この本は誠に読み易く、一晩で一気に読了しました。 バブルの発生…

『格差社会』

橘木俊詔さんの本、「家計からみる日本経済」に続いて「格差社会」(岩波新書)を読みました。「これはいいな」と思ったこと、全く同感だなと思ったことを記します。1.社会科学の論文は、こう書くべきだと、以下の点に感服しました。 (卒論にとりかかる前…

家計からみる日本経済

橘木俊詔『格差社会』が面白いと聞き、橘木さんてどういう人?としらべると98年に「日本の経済格差」という本を著し、格差問題に最初の発言をした人らしい。著書のリストをみると04年に「家計からみる日本経済」を岩波新書から出している。この本は面白…

失われた10年とは?

『「失われた10年」は乗り越えられたか?』(下川浩一著、中公新書)という 本、題名に惹かれて買ってきました。著者は、日米両国の自動車産業の研究者として著名です。 読んでいて一番面白かった記事は、企業の戦略について説明した次のくだり。 【かつて…

「節度の経済学」の時代

内橋克人著「<節度の経済学>の時代」(朝日文庫)なる本をよみました。どんな本かを、同書に載っていた二つのエピソードを抜書きして、紹介しましょう。 一寸旧聞ですが、旧長銀の話です。アメリカの投資会社はいくらで買い取ったか? 【10億円(政府が…